「ね、ねぇ夏兄さん…」


「なあに?」


「なんで…嫌いなの?リュードーさんのこと」


怖い

とっても怖いけど…


リュードーさんを嫌いってところは聞き捨てならなかった


夏兄さんは知らない


本当は優しくて不器用なだけなのがリュードーさんだって



「んー、、俺はねぇ別に龍堂彗自体が嫌いなわけじゃないよ。龍堂彗のような連中が嫌いなんだよ

本当どうしようもないバカで、喧嘩なんかしてもなんの意味もないのに関係のない人間を傷つける、低脳の集まり」


…ん?


「うるさいバイク飛ばして煽り運転しといて、それで事故ったのにしらばっくれるクズども…ほんと死ねばいいのにね」


煽り運転…


いやでもフラッシュバックする両親の記憶


…なんだろう…夏兄さんの話


後半…やけに具体的だった気がする


それに…怒りというよりは悲しいみたいな感情が読み取れる夏兄さんの横顔



そういえば…

夏兄さんがこっちに戻ってきた理由って

卒業したからじゃなくって、たしか


あ、


ご両親が…交通事故で亡くなったんだ


今の今まで忘れていた夏兄さんの事情


ま、まさか

私とおんなじ…?


「…もしかして…夏兄さんのご両親って…」


私を見て貼り付けられたような笑みを見せる

でも何も言わなかった


その沈黙がひたすら怖かった



でも…

もしそれが理由でリュードーさんを痛めつけるのだったら

すごく間違ってると思う…


「な、夏兄さんは…リュードーさんを痛めつければ満足するの?」


一か八か震える声を絞り出す


「ん?」


こ、怖い…なんの感情も見えない笑みが怖い