この目…見たことがある


ずっと前に…


あの、路地裏で猫を見ていた時の


「あの、リュードーさん」


「…なに?」


「今日も喧嘩をしてたんですか?」



単刀直入すぎたかな



「んー…ま、そうかな」


…喧嘩なんて痛いだけなのに


「喧嘩…怖くないんですか?」


リュードーさんは少し目を泳がせた


「…怖いよ。殴られたら痛いし、喧嘩は嫌いだ」


えぇ意外


「でも…なぜだか負けられないんだよ。俺についてきてくれる人のためにも、自分のためにも。」


そういうリュードーさんの顔はやっぱりくらい


「でも俺の取り柄ってそれくらいだからな。喧嘩で負けたことないって…俺にとったらなんの自慢にもならないけど。
そうじゃないやつらがいるんだよ」


そうじゃないやつら…

浜田さんたちとか、喧嘩をふっかけてくる相手とか…その人たちのことかな



でもきっとそれは違う


「リュードーさんの取り柄はそんなことじゃないです。
誰かのために必死になれるとことか、さりげないけど当然のような優しさとか私はいっぱい知ってます」


「…トンボ」


リュードーさんが目を開いてこちらを見る


「もちろん浜田さんたちも知ってますよ。ただ喧嘩に強いだけだったらみんなリュードーさんに付いて行こうとは思いません。

不器用な優しさや、力だけじゃない本当の強さを知ってるからみんなあなたを慕うんです。
もちろん、私も」