「友達とはスマホでお話すれば寂しくないわよ、ね? 幸い、彼氏もいないし」
「あなたたちがそれを言うか!」
実の娘に対して、あまりにひどい言い様。だけど真実だから言い返せない。
私は中学、高校と陸上部の活動にのめり込み、大学もスポーツ推薦で入ったものの、途中で膝を壊してしまった。
行き場をなくした私は大学を中退し、父の会社で働くことに。
でも、しがない事務ってなによ。一応、営業事務の仕事を真面目にやってたんだから。
「希樹が嫌なら仕方ない。結婚の話も、業務提携の話も、白紙に戻そう」
裕ちゃんの冷たい声で、両親が震え上がった。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って。嫌だなんて言ってないじゃない。ただ、うまくいくような気がしなくて……」
「じゃあ、承諾するのね?」
母が涙目で見上げてくるから、言葉につまる。



