愛しの Silver Fox 様

「私は悪しき者などではない」

珀が口を開いた。

「兄上と同等の力をもって生まれた私を恐れ、兄上が私を封印した。

もうすぐ、椿が十八の誕生日を迎え、満月がやってくる。

私の封印を解くのはその日までだった。

本当に楓には感謝している。
ありがとう、楓」

柔らかな微笑みに楓がその美しさに見とれ、頬を赤らめた。

直哉はそんな顔を見てムッとして珀を睨み付けた。

「言い伝えは数百年に一度一人だけのはずた!

椿が嫁ぐんだ楓まで嫁ぐ必要はないだろ!

楓は多々羅ヶ峰神社の後継者だ!」