愛しの Silver Fox 様

「みんなどうしたの?
おいで。ねぇ、きてよそばに」

裏山に入ると動物たちの様子がいつもと違った。

姿を見せるがいつものように楓にすり寄ってくるものは一匹もいない。

じっと楓を遠巻きに観察している…そんな感じに思えた。

祠につくとすでに来ていた直哉が、今にも泣きそうな楓を見て
「楓、どうしたんだ?」
と焦ったように聞いてきた。

「今日は…みんな私によって来てくれないの。
ほら、すぐそこにいるのに、どの子もそばにいつものように来てくれない…」

辺りを見回すと、近くの木々には小鳥やリスがたくさんその姿を見せてはいるが、じっとこちらの様子を伺っているようだ。


野うさぎや、狸の姿も茂みに見てとれる。

楓は子供の頃から動物たちに好かれ囲まれていた。

いつもニコニコして彼らを撫でさすり、一緒に遊ぶ楓を直哉は好きだった。

楓が許嫁だと知ったときは嬉しくて仕方がなかったが、恥ずかしくてまともに言葉を交わすこともできず、笑いかけることもできていない。