【番外編 その4】 エイプリルフール
誰にも覚れない嘘を吐く。



ー4月1日ー



「俺、結婚します!」



朝、駐車場に到着し、車から降りた自分の目前に、突然現れた上司が言った。

相変わらず、オールバックをビシッと決めて、素敵に微笑む。



「え、おめでとうございます」



自分はそれに冷静を装い、真顔でお祝いの言葉を述べると、しばしの沈黙が流れた。



「……いやいや?!もっと驚いてくれやんの?!」

「驚きました。本当におめでとうございます。お幸せに」

「いやいや、そうやなくて!ちょっ、今日、何の日か知っとる……?」

「エイプリルフールですね」

「そーうっ!!」



角野先輩が片手で顔を覆い、少々のけ反る。

大袈裟だなぁ、と思い、思わず笑ってしまう。

でも、自分も密かに嘘を吐いていた。