「あ、待って。まだ大丈夫だよ。いまお客さんもまばらだし。よかったらちょっと話がしたいなって思ってさ」

ニコッと笑って向かいの席に座った迫田さん。


はぁ。
こういうのって苦手なんだけどな。
何を話したらいいのか、よく分からないし。

「同期でもあんまり接点なかったよね、俺ら。今日はいつもと雰囲気が違ってビックリした。あ、ごめん!いつもはキッチリしてて、近寄り難いイメージっていうか。子供たちの受けもいいし。弟さんや妹さんがいるからかな」

「子供には慣れてるんで。そして今日の私はイベント仕様なんです。これも弟たちの指示で」

「なるほどね。俺は今日の蘭さんすごくイイと思うよ!それにしても、佐伯先輩とコンビなんだってね?それってすごいことだよ」

なんだか知らないけど褒められたみたいで恥ずかしい。

「ど、どうも。でもすごいってどうしてですか?」

「だってあの人一匹狼みたいな感じでしょ。今までもアシスタントがいたことあったけど、続かないんだよ。結局先輩が自分でなんでもやってしまうから」

なんか想像つくなぁ。


「私もよく叱られてますよ。言い返したりもしてますけど」

「ははは!流石だな。今日のことも無関心を装いながら、本当は気にしてたんじゃないかな。俺もやってみるまでどうなるか不安だったけど、蘭さんのおかげで良いイベントに出来たって思うよ。ありがとう」

そうなのかな?
ちょっとでも役に立てたなら良かったけど。

「私そろそろ戻りますね。迫田さんはゆっくり休憩してください」

「あ、伝票は置いて行って。ここは課長の奢りらしいから」

「いいんですか?ありがとうございます。課長にもお礼言っておきますね」

「うん。じゃあまたあとで。午後からもよろしく!あとさ……」

まだ、なにか?

「会社で会ったら今日みたいに話してくれるかな。せっかくこうして接点ができたから」

「あ、はい。それじゃ……」

新と信は中高生向けのゲームソフトのデモンストレーションプレイ中だった。
さすがイケメン……。
課長だけでなく来てくれた中学生や高校生の注目を浴びているようだ。

さて私も負けずに小学生の注目を集めますか!