そんな風に話したんだっけ。
別に悪いことしてるわけじゃないし、隠す必要もないよね。

「実はそうなんだ。私の上司、佐伯主任なの」

「えっ?さいき、さん……だって?」

新が不思議そうな顔で見てくる。
何か腑に落ちないって言いたげな。

「なぁまひろ。明日さぁ、兄貴の彼女に会うって言ってたよな確か」



「そうだけど。それがどうかした?」

さっきから何を気にしてるんだろう、シュウにぃ。

「いや、ちょっとな」

「じゃあ私はちょっと失礼。ゆっくりしててね、シュウにぃ」

「こんな時間からまたどこか行くつもりか?不良娘だな。翔と逢い引きするつもりじゃ……」

「おいシュウにぃ、今なんて?"ショウ"って誰?姉貴の上司?」

「ああもう!2人とももう黙ってくれない!?どこにも行かないわよ、お風呂に入るんだから」

ギャーギャーと煩いんだから、男のくせに。
新までシュウにぃの話に乗っかって。
とりあえず着替えの準備のために自分の部屋に避難。

あ、お風呂に入る前に佐伯主任にメールしておこう。
シュウにぃと会ったって言わないと。
今日も聞かれたから、よっぽど気になっているんだ。
『2人きりで会うな』って言われていたけど、家族みんなその場にいたんだし、問題ないよね。

えーと、まずは……。

"こんばんは"
"シュウにぃが家に来てました"

え、これだけ?こんなの業務連絡みたい。
じゃあその前に、ちょっと付け足してみようかな。

"先程は送っていただいてありがとうございました"

うーん、せっかくだからもっと彼女らしいことも言ってみたいかも。

"今週末は会えなくて残念ですが、月曜日にまた会社で会えるので嬉しいです"

うんうん、イイ感じ!

"来週末は予定入ってますか?"

あんまりグイグイ押すのもどうなんだろう?
ウザいかな……却下。

"また今度、都合が合った時にでも、一緒に過ごせたらいいな"

敬語じゃなくなってるけど、いいことにしよう。
よし、長過ぎず短過ぎず、伝えたい事を的確に!
送信!!