「あ、…いらっしゃいませー」



カランコロン…とドアについた鈴の音と共に店内にお客さんが入って来たのを見て、俺ー笹川 銀河(ささがわ ぎんが)ーは声を上げた。



だるいし、暑過ぎる。



そもそも、どちらかと言えば無口で塩対応で、口が悪くて何事にも興味を示さない俺に接客なんて出来るはずがないのだ。



それなのに、“ママの手料理”の店長であるあいつー吉良 湊(きら みなと)ーが、ずっと前に俺をこの仕事に勧誘したからこうなった。



控えめに言って、いやはっきり言って、ぶっ殺してやりたい。



俺には、こんな接客業よりパソコンと睨み合っていた方が随分楽だし絵になると思う。



そんな風に考えながら、俺が商品のマカロンの袋の封を破って口にくわえていると。




「ねえ店員さん、そんなんじゃ商売務まらないから」



レジの置かれている所の奥のドアが開き、隣の店(パパの手料理)のものだと思われるタピオカの飲み物を手にしたチビー丸谷 紫苑(まるたに しおん)ーが姿を現した。



「よぉ」



片手を挙げてそれに応えた俺の言葉を完璧にスルーして、彼女は俺の座るお客さん用のテーブルの真正面に腰を下ろした。



「銀ちゃーん、何お店の商品食べてるの?それ犯罪だよ、窃盗だよ、罪問われるよ、刑務所行きだよ」