「もしかして、まだ忘れられないの?3年前の"運命の人"」


「……だったら悪い?」




そう。
何を隠そう、私には3年間ひっそり片想いしている相手がいる。


とは言っても、その相手というのは、名前どころか酔っ払っていたせいで顔すら思い出せないような……もう、二度と会えない相手。



3年前。当時の彼氏に浮気されたショックから行きつけの居酒屋「甚助(しんすけ)」でヤケ飲みした私は、泥酔。


割れそうなくらいガンガンと痛む頭と、朦朧とする意識の中、なんとか店の外に出たのはいいけれど、完全に腰が据わって立てなくなってしまった。


そんな時、ふと私の上に大きな影が降って


「立てるか?」と差し伸べられた手に、私は無意識のうちに自分の手を重ねていた。


当時23歳だった私に「女が潰れるまで飲んでいいのは好きな男の前でだけだ」なんて説教じみたことを言いながらも、その人はタクシーで私のアパートまで送り届けてくれた。