それを聞いても、ハールは私を抱きしめたまま、腕を解こうとはしなかった。

「そんなこと、最初から知ってたよ。」

え?

「うそ… 」

「じゃなきゃ、好きになるはずないだろ。
フルーナとは、叔父と姪と言うより、
兄と妹みたいに育ったんだ。
大人になってからは距離を置いていたけど、
それでも、俺の中ではフルーナは家族
みたいなものだから。」

そう…なんだ。

少し、ほっとする私がいる。

「じゃあ、どうして最初からそう
言わなかったの?」

「言ったら、君が困るだろ?
そんな身代わりみたいなことをしてるんだ。
余程の理由があるのは考えなくても
分かるし。」

ハール…

私は、最初からハールに守られてたんだ。

「それより、君の本当の名前を教えて。」

あ…

私、一番大切な事を伝えてない。

「ふふっ
そうね。そうだったわ。
私は、クリス。
クリスティアーネ・ディートリンデ・…… 」

「王女殿下!!」