程なく、母は俺を身ごもり、出産した。

けれど、俺が男子だったばかりに、母は、王宮内で、さらに針のむしろに座らされる羽目になった。

国王が生きている間は、まだ良かった。

けれど、国王は、俺が8歳の時、呆気なく亡くなった。

国王には、亡き王妃との間に、すでに王子がいた。

俺の二十歳年上の異母兄に当たる。

同い年の母と兄。


亡き王妃は、大公の娘であり、大公は兄の強力な後ろ盾となっていた。

けれど、商家の出では王妃にはなれなかった母は、国王の要請で公爵家の養女となっていた。

大公を追い落としたい公爵は、母に、俺に、近付こうとする。

俺の幼少期、俺のあずかり知らぬところで、そんな政争が繰り広げられていた。

そして、母は、その政争から逃げるように、王宮を出て、東の離宮へと移った。

俺は、国王になんてなりたくもないし、権力なんて欲しくもなかった。

だから、大人になっても、宮廷の公式行事は、どうしても外せない行事以外、ことごとく言い訳を作って欠席し続けた。


そんな時、俺は暇つぶしによく出かける森で、彼女にあった。

森の中から聞こえる美しい音色。

不思議に思い、覗いてみると、そこにいたのはフルーナ王女だった。

彼女とは、国王主催の式典でたまに顔を合わせるくらいだが、全く面識がない訳じゃない。

特に、前国王が生きていた子供の頃は、歳が近いこともあり、よく遊んだものだ。