私は、早い者勝ちとでも言わんばかりに、申し込まれた順に踊る。

ハールでなければ、誰でも同じ。



ハールは…

踊りながら、私はハールを目で追う。

ハールは、貴族の令嬢たちに取り囲まれて談笑していた。


誰とも踊る気配のないハールにほっとしていると、一緒に踊っていたレオポルト王子が言った。

「フロレンティーナ王女、できれば私だけを
見てください。
私は王女ほど魅力的な女性を知りません。
あなたにも私を知っていただきたい。」

頭上でそう囁かれて、私はハッとする。

私が顔を上げると、レオポルト王子は私を見つめていた。

「私は、あなたとこのシュテファン王国に
一生を捧げる覚悟でここに来ています。
フロレンティーナ王女、どうか私と、人生を
ともに歩んでいただけませんか?」

どうしよう。

これって、プロポーズだよね?

こういう場合、なんてお返事したら…

「あの、私、まだレオポルト王子のこと、
よく知らなくて… 」

「そうですね。
ですから、これから、お互いにお互いの事を
知っていけたら…と思います。
今夜だけでなく、また会いに来ても
いいですか?」

「え… あの… 」

私が肯定も否定も出来ずにいると、ちょうど曲が終わった。


これでひと通り、王子たちとは踊り終わったはず。

私は、スカートを摘んでレオポルト王子に挨拶をすると、踵を返して立ち去ろうとした。