………言えない。

王女殿下に縁談がある。
王女殿下が目覚めなかったら…

それを言うことは、私が身代わりだと打ち明けることに等しい。

「何も…
ただ雨でハールに会えないと思うと、
寂しくて… 」

私がそう言うと、ハールは私の頬に触れた。

大きな手で私の頬を撫で、そのままそっと私の唇をその親指でなぞる。

「フルーナ、愛してる。」

「私も… 」

私が呟くのと同時に、ハールの唇が私のそれにそっと触れた。

私は目を閉じて、視覚以外の全てでハールを感じる。

ハールの息づかい
ハールの匂い
ハールの温もり

ああ…

ハールが好き

ハールが何者でも構わない。

どんな身分でも、
どんな仕事をしていても、
家族が何人いても…

私は、ハール本人が好きなのだから…