「フルーナ!!」

真っ暗な室内からのありえない声に驚いて、私は戸口に立ち尽くした。

「ハール…?」

「フルーナ、どうして… 」

ハールが戸口に近づいてきて、私は初めてその姿を確認できた。

「ハール!」

気づけば、私はハールに抱きついていた。

「ハール、ハール… 」

小屋の中なのに、いくつもの雫が頬を、ハールのシャツを、濡らしていく。

「フルーナ… 」

ハールがぎゅっときつく抱きしめてくれる。

ハールの腕の中…
ハールの胸にいだかれて…
ハールの温もりに包まれて…

胸につかえていた不安が溶かされてなくなっていくような不思議な感覚。

このまま時が止まってしまえばいいのに…


私が落ち着くのを待って、ハールは暖炉に薪をくべて火をつけてくれた。

暖炉の前に椅子を並べて腰を下ろす。

ハールは私の手を握って尋ねる。

「フルーナはなぜここに?」

「………ハールは?」

私は答えることなく、ハールに問い返す。

「俺は…
例え会えなくても、フルーナを感じて
いたくて…
ここに来れば、フルーナを感じられる気が
して… 」

嬉しい…

「私も…
ハールに会いたくて…
どうしてもハールに会いたくて…
気づいたら、お城を抜け出してた。」

会えた。
会えないと思ってたハールに。

「フルーナ、何かあった?」