「そう、違わないけど、補足がいるね。
バイオリンも得意だ。」

ハールは相変わらずにこにこと微笑んでいる。

宮廷へきて、こんなに明るく話す人と会ったのは初めてかも。


ああ、そうだわ。
私が王女だから、みんなが腫れ物に触るように敬語で話すからね。

こんな風に、普通の会話をしたのはすごく久しぶり。


すると突然、

「困った。
フルーナ、どうしよう?」

とハールが真剣な顔で尋ねる。

「どうしたの?」

「君の素敵なバイオリンで、君と踊りたいん
だけど、どうすればいい?」

それって…

「ふふっ
ふふふっ」

私は思わず吹き出してしまった。

私の演奏で私と踊りたいなんて、おもしろい人。

「じゃあ、まず演奏して差し上げるわ。
ハールは、目に見えない誰か…
そうね、森の妖精と踊るといいわ。」

私はそう言うと、ハールの返事を待たずにワルツを奏でる。

ハールは肩をすくめた後、踊り始めるが、すぐに音を上げた。

「フルーナ、ひとりで踊るほどつまらない
ことはないよ。」

「ふふっ
そう? とてもお上手なのに。」

私が笑うと、ハールは、私からバイオリンを取り上げた。