「………分かったわ。
クラウスを侍従から解任します。
だから、侍従をやめて、私の夫として、生涯
私のそばにいなさい。」

それが私のただひとつの望み。

「………それは… 無理でございます。」

クラウスが絞り出すような声で言った。

「そんなの、やってみなきゃ分からない
じゃない。」

「王女殿下も法に定められているのは
ご存知でしょう。
女王の夫には、公爵以上の身分の者しか
なれないと。」

そんなの、百も承知よ。

「そうよ。
女王の夫は公爵以上じゃなきゃダメ。
でも、幸い、私はまだ女王じゃないわ。
王女の夫は公爵じゃなくてもいいはずよ。」

「公爵以上じゃなくても構いませんが、
王位継承順位が3位以上の方の配偶者は
子爵以上の家柄でなければいけません。
私は、男爵家の出でございますから、
どちらにしても無理でございます。」

なんでそんな簡単に言うの?

「そんなの、お父さまに言って、爵位を
上げてもらえばいいじゃない。
クラウスは、それだけの働きをしてる
はずよ。」

クラウスは黙って首を横に振った。

「そのような事をすれば、今後の良くない
前例となりましょう。
王女殿下が御即位あそばされた時に、
あらぬ事を言う者が現れないとも
限りません。
私のせいで、王女殿下がそのような目に
合うのは私自身が許せません。
どうか、お聞き分けいただいて、王子たちの
中から伴侶となられる方を
お選びください。」