でも、大好きなハンバーグを嫌いになろうと思っても、すぐには嫌いになれないように、

これまで大好きだった流山くんを簡単に嫌いになれるはずがなかった。


嫌なところを見つけたら、この気持ちも消えるかもしれないと思って、

嫌いになるつもりで、流山くんを目で追い続けてみた。


朝、廊下で流山くんを見かけたから、
心のなかで呟いてみる。


『変な髪形! そんな短髪、今どきの中学生でもしてないよ』


そう思いながら流山くんをじっと見つめる。


……でも、流山くんには、黒髪の短髪がよく似合うな。


むしろ、ツーブロックの流山くんなんて見たくないし、やっぱりそのままの流山くんがいい。


流山くんほど、黒髪の短髪が似合うひとはいない…


うっとりと流山くんを目で追いかけている自分に気づいて

慌ててブンブンと頭を振った。


ダメダメっ!


嫌いにならなきゃいけないんだからっ!


休み時間に廊下で友だちとふざけている流山くんを見かけたので

「どうして男子ってあんなに幼いんだろうね」

と、口を尖らせてみる。


……でも、流山くんが一緒にふざけている友達は今朝の朝礼でみんなの前で怒られてたひと。


怒られて落ち込んでる友達や、失敗してへこんでる友達を、

流山くんはよく笑わせたりフォローしたりしてる。


だから、流山くんはいつも友達に囲まれてるんだろうなあ…

もし私が男だったら、やっぱり流山くんの友達になりたい。

あんなに優しくて面白くて、かっこいい人はいないもん…


それからも、頑張って流山くんのダメなところを探してみたけれど、


ケガした友達の代わりに用具を片付けていたり、

友達に自分の傘を貸して、自分は濡れて帰っていたり、

嫌いになれるはずがなかった。