そして彼はそれを自らの手首にあて、すっと動かす

途端に、傷口から紅い血が吹き出し、彼の制服や顔、教室の入口付近に付着する

まずい・・・・・・

「お、おい大郷?!」

「何してんだお前!」

周りがきゃーきゃー騒ぎ出すよりも前に、私は光の速さで動き、彼の手からナイフをもぎ取って廊下へと投げ捨てた

ナイフを奪わなければ、生徒達に斬りかかっていただろう

───記憶を消せば問題ない

私は彼の腕を掴むと治癒魔術を行使し、即座に傷を癒す

みるみるうちに傷口は塞がり、血は止まった

「え、た、小鳥遊・・・・・・?」

「血が、止まった?」

「え、いや、え?」

教室中がどよめく中、私は躊躇い無く彼の顎の当たりを軽く蹴りあげる

いつも飛び蹴りくらってそうだし、まあ大丈夫よね

それに加減してる

顎を蹴りあげられ、廊下まで吹っ飛ぶ

ナイフの近くに倒れたので、急いでナイフを蹴って遠ざけた

そして目を回す彼に手をかざし、治癒魔術と並行して、化物を体から抜き取る魔術を使う

「異形よ、我が前に屈し、愚かなる姿を顕現せん」

彼の下に魔法陣が浮かび、淡い紫の光を放ちながら彼の体を包む

しゅぽんっと愛嬌のある音とともに彼の身体から出てきたのは、ついこの前見かけたネコの化物

先生に付きまとっていたはずなのに、いつの間に大郷くんに

全然気づかなかった。にしても

大郷くん、あれ掃滅してなかったの?

「ばかね」

捉えた獲物は絶対に逃しちゃダメ

基本中の基本