「お前たちにとって、エアはかけがえのない存在だって事は分かる。でも俺はエアなんかよりもオフィーリアが一番大切なんだ。だから俺はエアの願いは叶えない」
 
彼女と再び会うためにも、もう一度この思いを伝えるためにもクラウンの思い通りになんてさせない。

絶対にオフィーリアを犠牲になんかさせない!
 
俺の言葉にアルは軽く息を吐くと、レーツェルへと視線を送った。

その視線に気づいたレーツェルは、覚悟を持った瞳を浮かべて大きく頷いて見せた。

その姿を確認したアルは俺に視線を戻した。

「お前がどれだけその人を愛しているのかは分かった。そのためにもエアの願いを叶えないと言うお前の気持ちも理解出来る。だから言っただろ? 俺とお前の相性は抜群だって」

「あ、ああ……そんなこと言ってたな」
 
するとアルは立ち上がると俺の前まで歩いて来る。そして右手を俺に差し出してきた。

「魔剣アムール――真の名はアムール・スターチス。俺の力は【愛した人を思えば思うほど】魔力がどんどん増していく能力だ」

「あ、愛した人を思えば思うほど!?」
 
アルの言葉に俺は顔を真っ赤にした。
 
それがアルの力の元になるって言うのか……。

つまり俺がオフィーリアの事を思えば思うほど、今よりもっと魔力が高まって魔法の威力も上がるってことになる。

いや、でも……恥ずかしくないか?!

「だから私はあなたに、アムール様を探して下さいと言ったんです。必ずあなたの力になってくれると思っていましたから」
 
ああ……だからって! まさかその時にはもう俺の気持ちがバレていたって言うのか?! 

レーツェルは立ち上がると、茹で蛸のように顔を真っ赤にしている俺を見て優しく微笑んだ。

その笑顔からは【知らないと思いましたか?】って言われているような気がして、俺は彼女から目を逸した。
 
レーツェルはアルの隣に来ると口を開く。

「私もオフィーリアを死なせたくありません。だからあんな人の思い通りにさせるつもりはありません」
 
そう言って彼女もまた俺に手を差し出してくれた。

目の前に差し出された二つの手を見つめながら、俺は覚悟を持って二人の手を取った。

「お前は必ずこの手でオフィーリアを助け出せ。お前たち二人の未来のために」

「ああ!」
 
そうだ。

今の俺は一人じゃない。

アルやレーツェルが側に居てくれる。

そしてオフィーリアが俺に託してくれた守護石だってある。
 
オフィーリア……ちょっと遅くなるかもしれないけど待っててくれ! 必ずお前の元に行くからな!
 
もう一度覚悟を決めた俺は、真っ直ぐ前を見据えて大きく頷いた。