「っ!」

「オフィーリアがお前をこの世界のトトだと認めてしまえば、必ずお前は自分のせいで彼女を殺してしまったと後悔する。そうなってしまったらお前を救う事は出来ない。だからアルバは、ブラッドではオフィーリアを救う事は出来ないと言ったんだ」

「……くっ!」
 
確かにアルの言う通りなのかもしれない。
 
もしオフィーリアが俺をこの世界のトトだと選んでしまって、そのせいで彼女が死んでしまったら俺は後悔するどころか、自らこの命を絶とうとするだろう。
 
だからオフィーリアはそうならないらためにも、俺の記憶の中から自分の存在を忘却したんだ。

俺を守るために、そして自分なんか忘れて他の人と幸せな日々を送ってほしいと……そう思ったのかもしれない。
 
でも俺は……! 

この世界のトトを誕生させるために、オフィーリアの命を差し出す事に納得する事は出来ない!

「だが……オフィーリアがあいつをトトに選ぶとは到底思えないな。今の話を聞いてクラウンと言う男は、とんでもなく最低な奴だって事は分かる。いくら自分を救ってくれる……とは言え、そんな大切な決断を簡単にはしないはずだ」

「私も同じ考えです。クラウンをトトとして選ぶと言う事は、自分の命を捧げる事になるのですから……」

「……どうして、オフィーリアだったんだろうな」

「えっ?」
 
俺は守護石から手を離した。

そして鋭い目を浮かべてレーツェルとアルの二人を瞳に映した。

俺を見たレーツェルはびっくりしたように肩を上げる。

そして彼女を庇うようにアルがマントを使ってレーツェルの体を包み込む。
 
そんな二人の姿を見た瞬間、俺の左目から涙が零れた。

「……ブラッド?」
 
俺は歯を噛み締めながら声を押し殺して泣いた。