ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

アルファのあの時の言葉が脳裏を過り、俺も視線を地面に投げた。
 
どんなにエアとトトがみんなが平等に幸せになれる世界を望んだとしても、人はまた同じ事を繰り返す。

名字が廃止になったのなら、また別の事で奴隷を支配しようとするだろう。

絶対に主に逆らえないようにするために体に恐怖を叩き込んだり、催眠術なんかも使って自分の思うがままに動く存在を作り上げる。

エアとトトが望んだ事は光ある世界では実現しているのかもしれない。

しかし影の世界では実現していないんだ。

だから【道化師】と呼ばれる闇組織が結成されたり、復讐や恨みを抱えた者は穢れた魔法に手を伸ばしてしまう。

「アルファの話は私も聞いていました。クラウンの元に居る三人にとって彼は、救世主と言っても過言ではない存在だと思います。確かに彼は彼なりに穢れた魔法を使って、苦しんだり困っていた人々に手を伸ばして救済してあげたのかもしれません。それもまた人を幸せに出来る手なのかもしれませんが……私は認めるわけには行かないんです!」
 
レーツェルは拳に力を込めると体を震わせた。

「なぜ、クラウンは星の涙だけでなくオフィーリア自身も狙っていたのか……。私は……その目的を知ってしまいました」

「なっ!」
 
その言葉に俺は目を見張った。

「レーツェル。ゆっくりで良いから、話してくれないか?」
 
アルは怒りで体を震わせているレーツェルの手をそっと取る。

そんなアルをレーツェルに優しく微笑みかけると口を開いた。

「アルバは言っていました。クラウンこそがこの世界のトトだと。そしてオフィーリアを助ける事が出来るのもまた彼を除いて他に居ないと」

「っ?!」
 
クラウンこそがこの世界のトト!? オフィーリアを救えるのはあいつだけだと!? 

その言葉からはまるで、俺ではオフィーリアを助ける事が出来ないと言っているように思えた。
 
そう一度思ってしまった俺は怒りで体を震わせた。