ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

奴隷売買が日常的に行われていた?! 

まさかアルたちが居た世界では、それが当たり前な事だったのか!? 

アルファが言っていた【奴隷区】と呼ばれる場所も存在していたのだろうか?

「奴隷として売られた者は、その体に主の名字を刻印として焼き付けられる。腕、背中、足、腹、体のどこかにその刻印があれば、奴隷は絶対に主の命令を逆らう事が出来ない。もし逆らおうとすれば、刻まれた刻印によって体に激痛が走る。最悪の場合刻まれた刻印によって死に追いやられるんだ」

「なっ……!」
 
名字によって体が支配される――

それはアルたちの居た世界では当たり前な事で日常的な事だった。

それが……日常的な事だった……だと!

「いったい……どんな権利があって! 人が人を支配することが出来ると思ってるんだよ!」
 
俺は拳に力を込めて力強く地面に打ち付けた。

「どの世界でも強者のやる事はみんな同じだ! この世界やあの世界だって強者だけが何をしても良いだなんて、そんなわけがないって言うのに!」
 
強者ならば弱者を守る側に付くべきなんだ。

それだと言うのに強者は、己の欲望や願いを果たす為だけに、自分の思い通りに動く手駒を欲する。
 
そして手駒を手に入れた強者は図に乗って、何でもして良いと思いこんでしまう。

誰かを傷つけてしまっても、誰かを泣かせてしまっても、誰かの命すら奪ってしまっても、強者は【関係ない】と言って何度も同じことを繰り返す。

使えなくなった手駒は捨てて、新たな手駒を欲したりもするだろう。

俺はそんなこと……許すことなんて出来ない!

「ブラッドの言う通りです。強者だけが何をしても良い何て通りは存在しません。だからこそ二人は、新しい世界で【みんが平等に幸せになれる】ことを願いました。名字を廃止し、誰にも囚われる事なく自由に生きて行くことが出来る世界。……そう、願ったはずでした」
 
レーツェルは辛そうに表情を歪めると顔を伏せた。

「僕は奴隷区で生まれて奴隷区で育った」