ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

彼女の言葉にアルは目を見張ると、辛そうに表情を歪ませた。

「お前はまたそうやって、俺を許そうとしてくれる。お前は……約束は破られたわけではないと言ったが、俺は……約束を果たせなかった。……約束を破ってしまった。それだと言うのに……お前はいつも、無理に笑って自分の本当の気持ちを奥に隠そうとする」

「……っ」
　
アルの言葉にレーツェルは小さく肩を上がらせた。

そしてレーツェルの体が小さく震え始め、地面にポタポタと涙が落ちていく。

「レーツェル……今は自分を偽らないでくれ、頼むから本当の気持ちを俺に言ってくれないか？」

「……っ。私……私は！」
　
レーツェルはアルから手を離すと彼の胸に顔を埋めた。

そんなレーツェルをアルは羽織っていたマントを使って優しく包み込んで抱きしめた。

「本当は……ほんの少し怒りました！　何で……必ず戻ると言ったのに……。約束を……守ってくれなくて……。あなたの死を目にした時、ずっと隣に居てくれたあなたの姿がなくて……怖くて……怖くて仕方がなかったんです！」

「……うん」

「最後に一人ぼっちになった時……怖くて仕方がなかった時……私を支えてくれたのが、アムール様から貰ったこの髪留めでした。でも……これだって……本当は直接あなたから受け取りたかったんです！」

「うん……」

「アムール様……もう……どこにも行かないでください……。私を……一人にしないで下さい！」

「ああ……今度こそ約束する！　もう二度と俺はお前から離れたりはしない！」
　
アルはレーツェルの言葉に何度も頷きながら、彼女を安心させるために優しく背中をさすっていた。
　
普通の人からしたら一見、この二人は恋人同士に見えるかもしれない。

しかし俺にはそんな風には見えなかった。二人は恋人同士というよりも、お互いにとって唯一無二の存在同士と言ったように見えた。
　
そんな二人の姿に俺は自然と笑みが溢れて同時に、俺もいつかオフィーリアと二人みたいな関係になれたら良いなとそう思ったんだ。