ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

オフィーリアの母親が【大切な娘を守りたい】と願い、そしてオフィーリアの【愛した人を守りたい】と言う願いはきっと、この守護石にはちゃんと受け継がれている。

「だから、ブラッド。その守護石は手放さないで下さい。それはオフィーリアがあなたを守りたいと思って、置いていった物なのですから」

「……ああ」
 
俺は軽く目を細めて頷いた。
 
レーツェルの言う通り確かにこれは、オフィーリアが俺を守りたいと思って残していってくれた物だ。

だが……これは俺みたいな奴の側にあって良い物じゃない。
 
これはオフィーリアの元にあるべき物だ。

俺だって……【愛した人を守りたい】んだから。

「レーツェル――」
 
するとじっと黙って話を聞いていたアルは、彼女の腕を掴むとそのままレーツェルの体を力強く抱きしめた。
 
突然の出来事に俺は目を瞬かせるが、アルはそんな俺を余所に口を開いた。

「レーツェル……すまなかった」

「アムール様?」

「俺は……約束を破ってしまった。【必ず戻る】と、そう誓ったのに」
 
アルは悔しそうに歯を噛みしめると体を震わせていた。

そんなアルに対してレーツェルは頭を左右に小さく振った。

「謝らないで下さい。アムール様」

「……レーツェル」

「この目でアムール様の死を目にしたあの時、とても悲しくて……辛くて、息をしている自分が許せなかった。だから私は自ら命を絶って、あなたの後を追おうとすら考えてしまった時もありました。今思えば馬鹿な考えです。アムール様との約束は破られたわけではなかったと言うのに」

「えっ……」
 
レーツェルはアルの手を握ると目尻に涙を浮かべながら優しく笑った。

「アムール様。あなたは今こうして私の目の前に居てくれています。あの時誓ってくれた通り、私のところへ戻って来てくれました」