ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

と――

「あなたなら……きっと大丈夫です」
 
するとエアは額に付けていたお守りの守護石を外すと、そっとそれを私の手の中に握らせた。

「私が必ず……あなたを守ります。どんな時でも必ず守ってみせます。あなたを決して……傷つけさせません。……アルとの約束……ですからね」

「……っ! エア……」
 
私はぎゅっと守護石を握りしめて顔を伏せた。
 
私は……守ってもらってばかりでした。

光ある世界へ導いてくれた二人にずっと恩返しがしたいと思っていたのに、いざとなったら私は二人に庇われてばかりでした。
 
それがずっと嫌で……こんな自分が嫌いになりそうで……、どうしたら良いのかと悩んだ時もありました。
 
でもそんな時エアが言ってくれたんです。

「レーツェ。守られることを怖がらないでください。怖がってしまったら、あなたは自分を守ってくれる人の気持を否定してしまう事になります。人は誰だって守られて当然なんです。私やトト……そしてアルやサファイアたちだって同じなのですから」

「……エア」
 
その時の記憶が頭の中を過って、私は小さく頷きました。
 
エアの気持ちを……怖がってはいけません。

これは彼女の思いであって、強い覚悟の証なのですから。
 
私から離れたエアは立ち上がると、青空に向かって両腕を広げた。

「星の涙よ、我の最後の願いを聞き届けたまえ!」
 
彼女の詠唱によって星の涙は青白く淡い光を灯した。私はその光景を見守る事しか出来ず、彼女の最後の姿をこの焼き付けようと思いました。

「どうか……頼みましたよ」
 
徐々に半透明になっていくエアは消える寸前に優しく微笑んだ。

「……っ! エア!」
 
エアに向かって手を伸ばした時、彼女の体は青白い光の粒となってその場で弾け飛んだ。

ゆらゆらと空に向かって飛翔していく姿を、私はじっと見上げる事しか出来なかったのです。