そう思いながら表情を歪めて拳に力を込めた時、アルの呆れた溜め息が耳に届いて、俺は伏せていた顔を上げて左目にアルの姿を映した。

「何をそんなに悩んでいるのか知らないが、正直に言わせてもらうぞ。今の俺とお前の相性は抜群だ」

「……えっ、そうなのか?!」
 
てっきり【相性最悪だ】って言われるかと思っていた。

相性抜群だって本人から言ってくれるって事は、アルは少なからず俺と契約してくれる気があるって思っても良いんだろうか?
 
でも俺とアルが相性抜群って一体どういう意味なんだ? 俺はまだアルがどういう魔剣なのかも聞かされていないと言うのに。
 
それに最初に気になった【スターチス】という名前。

彼もレーツェルと同じく名前が二つ存在している。

それはどうしてなんだ? 

【守護者】については前にオフィーリアが言っていた。

守護者とはエアが選んだ者たちの事を指し、そして守護者は魔剣と呼ばれる存在だと。

「アムール様。契約をされる前に、ここで彼との約束を果たしてもよろしいでしょうか?」

「約束?」
 
レーツェルはそう言うと、真剣な眼差しを俺に向けてきた。その姿に俺は身構える。

「まず始めに話しておく事があります。なぜ私たちが【魔剣の姿】をしているのか、という事について」
 
レーツェルは胸元に手を置くと話し始めた。

「私たち守護者たちが魔剣になる条件が一つあるんです」

「魔剣になれる条件?」

「それは……【死ぬこと】なんです」

「っ!」
 
その言葉に俺は目を見張った。

死ぬことによって魔剣になれるって……じゃあ今目の前に居るレーツェルとアルは既に死んで……いる。

「つまりエアの守護者である俺たち含める残りの六人は、既に全員死んでいるってことだ」

「……なあ、守護者っていったいどんな存在なんだ?」

「守護者というのはエアに選ばれた者たちの事を言います。つまり魔剣こそが【彼女(エア)を守るための存在】なのです」