あいつの狙いはオフィーリアの星の涙のはずだった。

だったらオフィーリア自身を狙うのではなく、星の涙だけを狙えば良い。

でも今のあいつは星の涙よりも、オフィーリア自身を優先しているように思える。

それはいったい何故なのか? 

「くそっ……!」
 
考えれば考えるほど分からない問題ばかりが増えていく。

今までの出来事が全てあいつの中のシナリオなのだとしたら、俺はどれだけあいつの手の平の上で踊らされていたと言うのだろう。

もうこれ以上あんな奴の思い通りにならないためにも、一刻も早くあいつの居場所を突き止めて、オフィーリアを助け出さないと……。
 
と言っても、クラウンとオフィーリアの行方を示す物は何一つないし、クラウンの魔力だってまだ察知出来ていない。

星の涙の魔力だって感じられない。
 
時間だけがただ過ぎて行くだけで、このままじゃオフィーリアの元に辿り着くことなんて。

「こんなところに居たのですね」

「――っ」
 
苦しい表情を浮かべながら水面を睨みつけていた俺は、声が聞こえた方へと振り返った。

するとそこには俺を心配そうに見てくるレーツェルの姿があった。

「どうしたのですか? そんな辛い顔をして」

「……それは」
 
俺は何て言ったら良いのか分からず、彼女から目を逸して右拳に力を込めた。

レーツェルにはなるべく……心配を掛けさせたくないと思っていた。
 
彼女はこの二日間、毎朝神様に祈るように朝日が昇って来る方へ体を向けては、地面に両膝を付いて祈りを捧げていた。
 
初めてその光景を目にしたとき俺は、彼女の姿が聖母……じゃなくて聖女のように見えた。

彼女がそんな事をする理由はきっと、オフィーリアを思ってのことなんだろう。

レーツェルは俺なんかよりもずっと深く、オフィーリアの事を心配しているはずだ。
 
俺はオフィーリアから詳しく二人の話を聞いたことがなかった。

聞ける機会がなかったって言うのもあるけど、オフィーリアはどこに行く時にも必ず、レーツェルだけは肌身離さず持ち歩いていた。