レーツェルと一緒にクラウンの行方を追って二日――

森の中を走っていた時に偶然泉を見つけた俺は、レーツェルに【少し休もう】と言って休憩を取る事にした。

「……っ」
 
太陽の日差しに照らされて光輝く水面を見つめながら、俺はここ二日間でレーツェルから聞いた話を思い出していた。
 
三ヶ月前――俺に忘却(オブリヴィオン)の魔法を掛けたのは、オフィーリアの実兄であるアルバ本人だった。
 
最初は俺を魔法協会から守るため、また星の涙を奴らに嗅ぎつけられないようにするために、俺を含めるオフィーリアと関わった全ての人の記憶の中から、彼女と星の涙に関する記憶を忘却した。
 
そして本来の目的であった、【魔剣を全て集める】と言う旅に戻ったかのように思えた。
 
だがアルバの本当の狙いはオフィーリアを俺から引き離し、その身をクラウンに捧げる事だった。

あいつの目的は滅んでしまったエアの末裔たちの復活らしいけど、詳しいことはまだ分からない。
 
レーツェルも【死んだ人間を生き返らせることは無理です】と言っていた。

しかしクラウンは何か根拠があって、アルバにエアの末裔復活の話を持ちかけたんだ。
 
それが何なのか今のところ分からないが、あいつが約束を守るとは到底思えなかった。

オフィーリアを手中に収めるためにと言っても、全てにおいて用意周到なあいつが、絶対不可能に近い約束を立てるなんてらしくない行動なんだよ。

俺の知っているあいつは常に何かに興味を抱いていて、興味を持った物の答えを求め、あらゆる手を尽くして問いの答えを導き出そうとする。

導き出された答えが、今の自分が最も心から欲しがっていた物ならば、あいつは必ず自分の物にしたいと言って強欲になる。

そう、あいつだったらこんな遠回りになるような事なんてしないで、あの手この手を使って直ぐにもオフィーリアを自分の物にしようとしたはずなんだ。

それだと言うのに、あいつはアルバに【エアの末裔復活】を条件にして、オフィーリアを俺から引き離させ彼女自身で自分の元へ来させるために動いた。