でもそれは全て俺が勝手に彼女の事情に踏み込んで、勝手に彼女を守りたいと思って、勝手に彼女を心から愛してしまったから始まったことなんだ。
 
俺はオフィーリア以上に身勝手な人間なんだよ。

だから彼女がいくら俺が来る事を拒んでも、俺はお前の元へ行くと決めたんだ。
 
だから――

「頭を上げてくれ、レーツェル」

「……ブラッド?」
 
レーツェルは恐る恐る顔を上げると、金色の瞳を揺らしながら俺をじっと見てくる。

「レーツェル。オフィーリアは俺を守るために、あいつのところに行ったんだろ?」

「は、はい……」

「オフィーリアは俺が来る事を望んでいないはずだ。だからあいつはクラウンのところへ行ったんだから」

「……っ」
 
レーツェルは顔を伏せるとまた小さく体を震わせ始める。

その姿を見て苦笑した俺は言葉を続けた。

「だからそんな身勝手なあいつを、俺も身勝手な理由で助けに行くんだ」

「……えっ」
 
レーツェルは伏せていた顔をバッと上げると目を軽く見開いた。

「俺はオフィーリアに守ってくれなんて頼んでないし、助けてくれとも言っていない。ただあいつが一人で全部決めて、全部一人で背負い込む覚悟を持ってやったことだ。だから俺も勝手にオフィーリアを助けに行くし、勝手にオフィーリアを守るんだ」
 
そう言って俺はレーツェルに笑って見せた。

「レーツェル。オフィーリアを助けに行くためにも、お前の力を貸して欲しい」

「……もちろんです! オフィーリアを助け出す事が出来るなら、私は何だってやるつもりです! ですから、遠慮せず私の力を使って下さい」
 
レーツェルの言葉に頷いた俺はレオンハルトへと視線を移動させる。

レオンハルトは俺の視線に気がつくと、何かを察したのかじっと俺を見てきた。
 
その姿に内心【流石だな】と思いながら俺は苦笑した。

そして覚悟を持って口を開いた。