一気に疑問の数々が押し寄せてきて、まだ別の意味で頭が痛くなってきた。

「私の名前を知っているってことは、本当にオフィーリアの事を思い出してくれたんですね。……本当に、良かった……」
 
レーツェルはそう言うと嬉しそうに涙を流した。

その姿に俺は申し訳ないと思いながらもレーツェルに問いかけた。

「レーツェル。お前がここに居るってことは、オフィーリアはお前を置いていったのか?」

「いいえ……私はオフィーリアから引き離されてしまいました。……アルバの手によって」

「……アルバ?」
 
確かアルバってオフィーリアの……。

「……オフィーリアは自分を犠牲にして、決して手の届かないところへと行ってしまいました。それは彼女が強い覚悟を持って決断したことだと言う事は分かっています。でも私は……それを見過ごすわけには行かないんです!」

「……レーツェル」
 
レーツェルは俺の前まで歩いて来ると、頼み込むように深々と頭を下げた。

「どうか……お願いします! あなたの力を貸してください、ブラッド! 今の私だけでは、オフィーリアを救い出す事が出来ないんです!」
 
俺はその姿に目を見張ったと同時に、彼女の体が小さく震えている事に気がついた。

それはきっと拒絶されると思ってしまっているからなのだろう。
 
オフィーリアは俺を守るためと言っても、一度は俺の記憶を忘却してしまっている。

記憶を勝手に忘却した挙げ句、今度は自分でその身を犠牲にしてクラウンのところへ行ってしまった。

当然、何て身勝手な奴なんだろうと思っても良いだろう。

俺はオフィーリアによって散々振り回されたし、危険な目にだって何度かあったし死にかけた事すらだってある。