ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

いったいどういう意味だ? 

【喜ばしい】ってことは、これからクラウンが話す内容によっては、俺たちにとっても少なからずメリットがあるってことになる。
 
しかしそんな話を今更してどうするって言うんだ? 

何が目的なんだ? 

言葉の意味が分からず表情を歪めた時、クラウンはニヤリと俺たちに笑って見せてから告げる。

「俺たちは今この場を持って、二度と君たちの前に姿を現さないと約束するよ」

「なっ?!」

「っ!」
 
その言葉に俺とレオンハルトは目を見張った。

しかしその言葉と同時に俺の中で抑え込んでいたどす黒い感情が溢れ出た。
 
さっきよりも膨張し続けるどす黒い感情によって心が飲み込まれた時、俺の中で糸がぷつんと途切れた。
 
そして怒りで自我を失い掛けるも、俺は何とか自我を保ちながら体を震わせて両拳に力を込めた。

「……俺たちの前に姿を現さないだって!? 散々、俺たち以外の人たちにも迷惑をかけ、大勢の罪のない人たちを殺してきたお前たちが、罪を償う事もせずにこの世界から姿を消すって言うのか?! そんなの許されるわけないだろ!」
 
レオンハルトが掴んでいた手を払い除けた俺は、クラウンへと右手をかざした。

その姿に焦ったアルファたちも俺に構えるように体勢を取る。
 
しかしクラウンが右手を軽く上げたのを見て、三人は潔く後ろへと下がり、今度はクラウンが一歩前へと歩み出た。

「そうだね。確かに俺たちはこれまで多くの罪を重ねてきた。当然、許されるべき事ではないと思っている。でもこれは俺にとって、かけがえのない人との約束だからね。破るわけにはいかないんだ」

「――っ!」
 
その言葉を聞いた時、頭の中でまたあの頭痛が走った。

「ま、たっ!」
 
その頭痛は俺が今まで感じてきた物の中でも一番最悪な物だった。

鈍器で頭を殴られたと言うよりも、固い石で何度も頭を打ち付けられているみたいで、間をおかずに酷い頭痛が押し寄せてくる。