ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

俺はクラウンを警戒しつつ三人の様子も伺った。
 
もしこの場に一人で来ていたら、俺は間違いなく攻撃を仕掛けていただろう。

クラウンの言葉を無視して逃げることはせず一人で三人を相手したと思う。

しかし今は隣にレオンハルトが居る。

下手に仕掛けてレオンハルトを巻き込むわけには行かない。
 
だから俺は力を込めていた拳を解き話を聞く姿勢へと入った。

「話ってなんだよ? ふざけた話だったら今この場でお前を殺してやるからな」

「ふっ。君は相変わらず短期だね。せっかく美青年として生まれてきたって言うのに、そんな顔じゃレディたちが逃げて行くんじゃないのかな?」

「余計はお世話だ!」
 
そんなことお前にとやかく言われる筋合いはない!

「ま、良いさ。でも君は記憶を忘却されていると言うのに、よくそんな平気な顔をしてこの場に立っていられるね。君は俺に記憶のことについて聞いてくるだろうと、予想していたんだけど」
 
その言葉に俺の心臓が大きく跳ね上がった。

「……なんだって?」
 
記憶が忘却されている?! 

どうしてそんなことをこいつが知っているんだ? 

まさかこいつが俺の記憶を忘却したって言うのかよ!?
 
徐々に心臓の心拍数が上がっていき嫌な汗が額に滲み出る。

体がドクドクと脈打つように熱くなって来るのを感じながら、俺は鋭い目を浮かべた。

「お前が俺の記憶を忘却したって言うのかよ?! いったい何のためにだ!」
 
今直ぐにでもクラウンに攻撃を仕掛けようとする俺の右腕を、レオンハルトは焦って力強く掴んできた。

「落ち着けブラッド! 今仕掛けるのはまずいだろ!」
 
レオンハルトの言葉に俺は何とか自分自身を抑え込もうと深く深呼吸する。
 
そんな俺の姿を見ていて面白かったのか、クラウンは話を変えるように言葉を続けた。

「話って言うのはとても簡単なことだよ。それにこれは君たちにとっても喜ばしいことでもあると思うんだ」

「……喜ばしいことだと?」