『……そうですか。だからオフィーリアをクラウンの元へ行かせたのですね』

「そうさ。後はオフィーリアが首を縦に振れば全てが終わる」
 
アルバの言葉に私は唇を噛んだ。

しかし直ぐに私は口を開く。

『彼がこの世界のトトですって? 冗談を言わないでください』
 
そう言って私は切先を地面へと向け、体を起こして真っ直ぐその場に浮く。

そんな私をアルバは目を細めながら見てくる。

『この世界のトトは彼ではありません。私たち守護者が仕えるべき存在はあの人です!』
 
私はオフィーリアとブラッドが出会ったのは、偶然ではなく必然だと思っています。

エアが行く先に、必ずトトは居る――
 
彼女のその言葉を信じて歩き続けた結果、その先に居たのが彼だったのですから。

「……なるほど。だからクラウンは【この世界に道化は二人も要らない】と、言っていたのか」
 
アルバはそう言うと軽く笑みを浮かべ、暗闇の中へと消えて行こうとする。

「でもあの人はオフィーリアの事を忘れてしまった。俺の掛けた忘却の魔法は、掛けは本人が解かない限り、絶対に解ける事がないんだ。だからあの人がオフィーリアの元へ行くことは絶対にない」

『……そうですね』

アルバの姿が暗闇の中へと消えたのを見届けた私は、その場にぽつんと浮かんだまま口を開く。

『……そうですね。しかしそれは彼がオフィーリアを思い出そうとしない場合ですが』
 
そうぽつりと呟いた後、私は刀身に白色の光を灯させ、そして元の姿へと戻り素足で地面へと足を付かせた。

その拍子に肩先まである白銀の髪がなびき、着ている白いワンピースが舞い上がる。

閉じていた目を開いて、ゆっくりと振り返った私は金色の目で青空を見上げた。