「これで……良いんです」
 
頬に一滴の雫が流れ、私はレーツェルに背を向けた。

『オフィーリア……!』
 
クラウンは私の姿をフードで隠すと最後に聞いてくる。

「これで君が外の世界を歩くことはもうなくなる。最後に生きたい場所はあるかな?」
 
その言葉に私は数秒考え込んでから頭を左右に振った。

それを確認したクラウンは小さく頷くと、私と一緒にその場から姿を消した。

「さようなら……ブラッド」
 
私は生まれた時から幸せになることなんて許されていなかった。

星の涙をこの身に宿す限り、死の恐怖は決して私を逃がそうとはしない。
 
でも私は……一時の幸せだったとはいえ、あなたに出会えてよかったです。

あなたと出会って真っ暗だった道の先に一点の光が灯された。
 
生きる事に絶望を感じていた私に、あなたは一緒に未来へ行こうと言ってくれた。

それが……凄く嬉しかった。
 
あなたの存在は私にとって光でした。

その光に二度と手を伸ばす事が出来なくても私は……ずっとずっと……あなただけを愛していますから。

✭ ✭ ✭

『アルバ!!!』
 
私は切先をアルバに向けて脅しを掛けるように問いただす。

『なぜ、オフィーリアを裏切ったんですか! あなたは彼女の幸せを望んでいたはずです! なのに……どうして!!』
 
さっきクラウンと共に消えたオフィーリアのとても悲しく、切なかった笑顔が脳裏を過って、私は歯を噛み締めながらアルバを睨みつけた。

しかしアルバもまた変わらず冷めた目で私を見てきている。

「勘違いしないでくれ、レーツェル。俺は今もオフィーリアの幸せを願っているさ」

『なら……どうして!!』
 
アルバの目的は死んでしまったエアの末裔たち全員を生き返らせること。

しかしそんなこと不可能に近い。

死んだ人間を生き返らせるなんてことは禁忌そのものです。
 
そもそもクラウンはいったい何の根拠があって、エアの末裔たちを生き返らせると約束したと言うんですか?!