「きゃっ!」
 
強く突き放された私の体は、そのままクラウンの方へと倒れ込む。

そんな私をクラウンは抱き留めるとそっと耳元で囁いた。

「さあ、どうする? 君が俺の元に来れば君のお母さんを含め、今まで寿命で早死にしてしまった、エアの末裔たち全員が生き返るんだよ?」

「っ!」
 
その悪魔の囁きに私は目を見張った。
 
私がクラウンの元へ行けばお母様やサーニャ、そして私を逃がすために命を落としてしまった、エアの末裔の人たち全員が生き返る事が出来るの?
 
でも……人を生き返らせる事なんて不可能に近い。

そもそもそんなもの禁忌の行いだ。

いったいクラウンはどうやってお母様たちを……。

「それに……もし君が来てくれたら、ブラッド君にはもう手を出さないと約束しよう」

「……っ!」
 
私はその言葉に一番反応した。

クラウンもやっぱりと思いながら、嫌らしい笑みを隣で浮かべている。

そんな彼を横目で睨みつけながら私は右拳に力を込めた。
 
【君は必ず俺のところに来る】――その言葉の意味が……分かってしまった。
 
私は歯を噛み締めて、ずるい、卑怯だと思いながら小さく頷かせて見せた。

そんな私の姿に当然クラウンは嬉しそうにニッコリと微笑んだ。
 
私がクラウンの元へ行けば……全てが上手く行く。

ブラッドから道化師を引き離す事が出来る。

本当の意味で……彼を守る事が出来るんだ。

「良い子だ」
 
クラウンは私から顔を離すとそっと体を抱きしめてきた。

『オフィーリア! あなたが犠牲になる必要なんてありません! そんな者のために、あなたが不幸になるなんて!』

「良いの! ……レーツェル」
 
私は最後にレーツェルの方へ振り返って笑顔で言う。