「他の魔剣の行方はハッキリしていないしな……ここに来て手詰まりか」
 
お兄様は唇を噛むと表情を歪めた。

そんなお兄様を見て私も視線を下げる。

そして服で隠れてしまっている星の涙の上にそっと手を置いた。

『私たち守護者は守護者同士で特別な絆が結ばれています。なので魔力を探知する事で、その者の居場所を突き止める事が出来るのですが、目覚めていなければ居場所を特定するのは難しいですね』
 
だからレーツェルでも残りの守護者たちの居場所を見つける事が出来ないんだ……。

レーツェルと特別な絆を結んだ人も、きっとまだ目覚めていないのだろう。

「とりあえずここを離れるぞ。マールの回収が無理ならこの街に留まる理由もないからな」
 
そう言ってお兄様はフードを被り直すと、真っ暗な路地の奥へと進んで行く。

その後ろ姿に慌てた私もフードを被り直してお兄様を追いかけようとした。
 
しかし――

「っ!」
 
背中にゾクリと嫌な魔力を感じ取った私は、鞘からレーツェルを抜いて構えた。
 
左右に目を配りながら魔力の出処を探っていた時、お兄様は私の剣を構える姿を見て、腰にあった短剣を抜きながら側へと駆け寄って来た。

「オフィーリア、用心しろよ」

「は、はい!」
 
そっとお兄様に耳打ちされ、レーツェルを握る柄に力を込めた時だった。

「随分と探したよ。まさかこんな薄暗い場所に居るなんてね」

「――っ!」
 
その声を聞いて肩がビクッと大きく跳ね上がった。

柄を握っている手が震え始め顔を青くした時、脳裏に夢の出来事が過った。
 
真っ黒な黒髪が風に吹かれそっとなびき、右顔を仮面で半分覆い隠した人物、そして嫌らしく灰色の左目を細めた人物――クラウンが、私たちの前に仁王立ちしていた。
 
目の前に居る人物がクラウンだと気づいたとき体の震えが更に増した。