「っ! イト! お前何をする気だ!」
 
するとエアの体は大きく脈打つと、元の義眼の姿へと元に戻った。

「エアが傷つく世界なんて、エアが泣く世界なんて……要らない!」
 
すると義眼の姿をしていたそれは、クリエイトの力によってその姿を大きく変えた。
 
真っ赤に染まっていたそれは眩い蒼色へと変色し、大きな魔法陣を展開させると、魔法陣の真ん中に砂時計を出現させ、その上に大きな時計が姿を現す。

「こ、これは……!」
 
その光景に俺たちは目を見張り、今までに感じたことのない魔力に体が震えた。
 
魔法陣の真ん中にある砂時計は、ゆっくりとその体を回転させると、中にある砂たちを少しずつ落としていく。
 
そして次の瞬間、俺たちの体にある違和感が走った。

「な、なんだ!?」
 
体がフワフワするような感覚に陥り、力がどんどん抜けていく。

「か、体に……力が!」
 
俺は砂時計に手をかざしているクリエイトへと目を向ける。

「僕が……エアのために、エアが幸せになれる世界を……作る!」

「なっ! じゃあ……これは!!」
 
砂時計の上に存在している大きな時計は、その針を数字の一のところまで進ませる。

そして――

楽園の世界(エリュシオンヴェルト)
 
その魔法が発動されたと同時に、俺たちの意識は完全に失った。
 
ただ温かい光に体が包まれていくのを感じながら、俺たちは永い眠りの中へと誘われていった。

「これが……本当の世界の魔法」
 
地面で倒れている俺たちに目を配りながら、クリエイトは頭上に浮かぶ月を見上げた。

「……ああ、あの時も……こんな月夜だったな」
 
それはクリエイトが初めて『幸福』を受け取った夜の事だった。



ヴェルト・マギーア 星の涙Act.2 END