俺は地面に上手く着地し、クラウンの姿を見つめる。

「……こ……の、俺が!!」

「なっ! あいつまだ!」
 
クラウンは体中から血を流しながらも、何とか両足で踏ん張ってその場に立っているようだった。
そして今度は左手を使って、自分の右目の中に埋め込まれた義眼を取り出した。

「……まだ、まだだ!」
 
その言葉を聞いたクリエイトは、魔剣の姿から元の姿に戻ると、クラウンの手の中にあった義眼を受け取った。

「クリエイト! お前!!」
 
サファイアはクリエイトへと手をかざす。

しかしサファイアは攻撃が出来ないのか、辛そうに表情を歪めた。

「ブラッド。君の覚悟と思い、見させてもらった」

「……クリエイト……。お前、こんな事してまで一体何が目的だったんだよ!」
 
クリエイトはクラウンの前に立つと、手の中にある義眼を頭上へとかざした。

そして次の瞬間、掲げられた義眼がドクンと脈打つと眩い光を放った。

「くっ!」

「ま、眩しい!!」
 
眩い光がこの一体を包み込んだ。

「……っ」
 
俺は光が止んだのを感じ、ゆっくりと目を開いて、目の前の光景に目を見張った。

「なっ!!」
 
それはこの場に居た全員が驚かざるを得ない光景だった。
 
クリエイトが義眼を使って作り出した者、それは――

『え、エア……』
 
そうポツリとレーツェルの声が響いた時、目を閉じていた彼女が、ゆっくりと目を開いた。

『そんな……なぜ、エアがここに!?』

「……イト。お前……」
 
レーツェルとアルはそれぞれ元の姿に戻ると、クリエイトの隣に居るエアに視線を送る。
 
エアはアルたちの姿に気がつくと、彼らに言葉をかけることはせず、自分の後ろに居たクラウンへと振り返った。

「お、おぉエア! エア!!」
 
エアの姿を見たクラウンは、涙を流すと彼女に懇願するように両手を組んで、深々と頭を下げた。

「おぉ、エアよ、俺の愛しいエアよ。ようやく、ようやくあなたと再会を果たす事が出来た! 俺は自分こそがこの世界のトトになるため、そしてあなたを迎えるために頑張って来ました。ですから、俺が、俺こそがあなたのトトとして相応しい。あんな男よりも!!」

「…………」
 
エアはクラウンの言葉を聞き終えると、そっと頭を左右に振って告げる。

「いいえ、あなたはではありません。私が探していたトトは」

「……えっ」
 
クラウンにそう告げたエアは、次に俺の方へ振り返ると、まるで愛しい人を見るような目つきで優しく微笑した。
 
その姿に俺は目を見張ったと同時に、俺の中にある何かが、ずっと何かを言いたげに表に出かかっていた。

「私が探してたトトは……あなたです。ブラッド」

「っ!」
 
エアはクリエイトの隣を通り過ぎると、俺の側まで歩いて来る。

「……エア。あなたが、どうして……」
 
レーツェルは恐る恐る彼女にそう尋ねる。
 
エアはレーツェルたちの姿に気がつくと、彼女たちとの再会を喜ぶどころか、邪険な目でレーツェルたちを見つめた。

その姿にこの場に居た守護者たちは、みんな驚いて目を見張った。

「……ブラッド。私の……私だけの、愛しのトト――」
 
エアはそっと俺の頬に手を伸ばして触れてきた。