ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「いい加減にしてくれよ! お前は俺に何を伝えたいんだ!!」
 
どうして彼女の顔が見えなくされているのかは分からない。

でも……それでも俺は!!
 
左目から一滴の涙は零れ落ちた時、聞こえなかった言葉の一部分が聞こえた。

「その【魔剣】の名は?」

「魔剣アムールよ」
 
その言葉を最後に頭の中に流れた記憶はぷつりと途絶えた。

「はあ……はあ……魔剣?」
 
荒くなった息を整えながら、額に浮かんだ汗を拭った。
 
そうだ……。

俺は彼女と魔剣アムールを探すと約束したんだ。

しかし魔剣の事を思い出せても、彼女の事は何一つ思い出す事が出来なかった。

手掛かりだって見つけられなかった。

まるで……彼女の事だけを思い出せないようにされたような……。
 
真っ黒なペンで塗りつぶされていた彼女の顔を思い出して、頬に汗が流れ落ちたとき老婆の声が耳に入った。

「兄さんや? 顔色が悪いようだけど、何かあったのかい?」

「い、いや……別に」
 
そう言って老婆から視線を逸した時、俺の目にある一本の剣が飛び込んできた。

「……なんだ?」
 
一見普通の剣に見えるそれからは微かだけど魔力が感じられた。
 
俺の視線の先に気がついた老婆は、クスリと笑うとその剣を取って見せた。

「これはただの錆びた剣じゃよ。この通り……鞘から抜けんのよ」
 
老婆はそう言って鞘から剣を抜こうとする。

しかし老婆の言う通り錆びているせいなのか、剣はびくともしなかった。
 
老婆は諦めて軽く息を吐くと、今度はそれを俺の方へとよこした。

「お兄さんもほら、良かったらやってみぃ」

「……」
 
俺は仕方なく老婆から剣を預かり、柄を握って鞘から剣を抜こうと試みた。
 
錆びていてびくともしないんじゃ、俺だって抜けそうにないんだけどな……。

そう思いながら渋々力を込めて柄を引っ張った時だった。

錆びてびくともしないはずのその剣は、何故か簡単に鞘から抜け出た。