「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ、クラウン!! 全部が全部アルバのせいだって言うのかよ!? そんなわけねぇだろ!!」
 
俺は思い切り足を踏み込んでクラウンへと飛んで行く。

「アルバはエアの末裔たちの幸せと、オフィーリアの幸せを願っていた!! だからお前の言葉を信じてこんな事になってるんだろ!!」

アムールを思い切り振りかぶり、クラウンの頭上目掛けて刀身を振り下ろす。

クラウンもまたクリエイトを使って迎え撃ってきて、刀身が激しくぶつかり火花を散らせた。

「全部……全部お前のせいだろ! お前がこの世界のトトになるなんて欲望を持たなければ、全員が幸せに暮らしていたんだろうがぁ!!」

「……ブラッドさん」
 
俺の言葉にクラウンは鼻で笑うと言う。

「しかし逆にそれでは、君はオフィーリアと出会う事はなかっただろう?」
 
その言葉に俺は軽く目を見張った。

そんな俺の姿にクラウンはニヤリと笑みを浮かべると、アムールの刀身を跳ね返した。

「おわっ!」
 
そして直ぐに俺に向かって左手をかざすと魔法を放つ。

黒の槍(セイブルランス)
 
クラウンの背後に黒の槍が姿を現すと、それは俺目掛けて一気に飛んでくる。俺は空中で体勢を整え直ぐに神の守りを貼った。

「君がそうやって神の守りを貼ることは知っていたさ。だから――」
 
クラウンは右目に魔力を注ぐと、一匹残っていた黒焔の目に命令を下した。

「黒焔の目よ。その神の守りの食らいたまえ」

「っ!」
 
その命令によって黒焔の目は俺の目の前に姿を現すと、ギョロッと目玉を一周させてから大口を開いた。

「ちっ!」
 
俺は直ぐに瞬間転移の魔法を使ってその場から飛び、サファイアの隣へと移動した。

「はあ……はあ……はあ……」

「ブラッド! 大丈夫か?!」

「はあ……あぁ、問題、ない」
 
そう言って乱れる息を整えながら、俺はゆっくりと立ち上がって前を向いた。
 
正直、このままじゃ俺の魔力が保つ気がしなかった。
 
こう何度も魔法を放っては食われ、なんて事を繰り返してばかりいれば確実に俺は負ける事になる。
 
この右目に魔力を注いで碧眼の魔力を使ったとしても、こっちの方は魔力の消耗が激しい。だから下手にこの魔力を使うわけにはいかない。

「くそっ! 一体どうすれば良いんだよ!」

トトは光と闇の大精霊の力を使って、あの黒焔の目を退けたとアルは言っていた。
 
しかし俺にはそんな大精霊の力を使う事が出来ない。そもそも大精霊と契約をするってのが無理な話だ。
 
いくら俺の魔力が他の人間よりも遥かに高いと言っても、大精霊と契約を交わした時にどれだけの魔力を消耗するのか分からない。