アルバは軽くジャンプすると、頭上に短剣を構えて刀身を思い切り振り下ろす。

そしてその刀身が俺の頭を直撃しようとした瞬間、首から下げていた翡翠の守護石が眩い光を放った。

「なっ!? この輝きはまさか――」
 
守護石が放った眩い光には俺の体を包み込むと、アルバの剣撃から俺を守ってくれた。

その光景にこの場に居た誰もが驚き目を見張っていた。

唯一、クラウンだけを除いて。

「その守護石は……母さんがオフィーリアに託した物だったはずだ。なのに、何でお前がそれを持っているんだ!」

「……これはオフィーリアが俺を思って置いて行った物だ。俺の事を守ろうとしてな」
 
翡翠色の光を放ちながら俺の事を守ってくれている守護石を掴んで、俺は軽い口付けを落とした。

「オフィーリアにこの守護石を託したお前たちの母さんは、きっと誰よりも二人の幸せを願っていたはずだ。こんなこと……望んでいなかったはずだ!」

「うるさい!! 母さんは俺とオフィーリアに言ったんだよ! オフィーリアは必ず幸せになれるって! だから俺はその言葉を信じた! だからオフィーリアは死んでようやく幸せになれたんだ!」

「っ! 誰が死ぬ事で幸せになれるなんて言ったんだよ! お前たちの母さんがそんな風に言ったのかよ! もしそうだったらとんだイカれた母親だったな!」

「お前が母さんの事を悪く言うな! 母さんは俺なんかよりもオフィーリアの幸せを一番に願っていた! 生まれた時から魔力が少なかったオフィーリアに、いざという時以外は魔法を使うなって言い聞かせただって母さんだし、次に星の涙が受け継がれるオフィーリアの将来の事だって心配していたんだ!」

「だから死ぬ事で幸せになれるって、そうお前たちに言ったんだろう?!」

「違う! 母さんはそんなこと一言も言っていない!! …………はっ!」
 
その言葉を聞いて俺は目を見張った。

そして同時にアルバも何かに動揺するように、瞳を大きく揺らしていた。

「違うよ、ブラッド君」

「――っ!」
 
するとさっきから俺たちの事を傍観していたクラウンが、数歩前に出ると口を開いた。

「アルバにそう言ったのは……俺だよ」

「……ああ、そうなんじゃねぇかって思ったよ!」
 
死ぬ事で幸せになれるだなんて事をアルバに吹き込む馬鹿は、他の誰でもないクラウンだって最初から分かっていた。