こいつ……速い! 

そう内心思いながら何とかしてアルバと距離を取ろうとした時、アルバは俺に左手をかざすと闇の鎖で俺の足の動きを封じた。

「なっ!」
 
そして高くジャンプしたアルバは短剣に魔力を込めると、短剣を思い切り振りかぶり左斜め上から左下斜めに短剣を思い切り振り下ろした。
 
その瞬間俺の体に激痛が走り血しぶきが飛んだ。

「ぐああああ!!!」

『ブラッド!』
 
左胸から右下腹にかけて大きな斜め傷が付けられた。

そこから血が流れ出し着ている服を赤く染め上げていく。
 
目の前が大きく揺れた時、俺は地面に片膝をついた。

『ブラッド! 大丈夫ですか?!』

「はあ……はあ……大丈夫だよ、レーツェル。……問題、ない」
 
俺は彼女にそう声を掛けながら立ち上がって、アルバの姿を両目に映した。

そしてアルバの姿があの時のオフィーリアと重なって見えた。
 
裏切られる事を恐れ、信じる事を恐れて、剣の切っ先を俺に向けて来た時のオフィーリアの姿が脳裏を過り、俺は軽く目を細めた。
 
そんな俺に姿に気がついたアルバは、表情を歪めると低い声で聞いてくる。

「……その目は何だよ?」

「いや……ただお前のこと、可哀想だなって思っただけだ」

「っ! どうして俺がお前にそんな事を思われないといけないんだ!」
 
アルバは怒りの表情を浮かべると、短剣を掴んでいた手に力を込めて再び俺に向かって来る。

「俺のどこか可哀想だなって思ったんだよ?! そんなことお前に思われる筋合いなんてないぞ!」

「……ああ、確かにそうだな。俺は今までお前がどんな風に生きてきたのか知らないし、どんな思いで居たのかも知らない。でも……お前の姿を見ていると、やっぱりオフィーリアの姿が脳裏を過るんだよ」

「っ! お前……ふざけたこと言うんじゃねぇよ! それで俺を殺せないとでも言うのかよ!」