「――の事を話せないなら、俺が――と同じ位置に立てばいい」

「っ!」
 
頭の中を流れるその記憶に俺は目を見張った。

それは大切な記憶の部分だけを、思い出す事が出来ない事に気がついたからだ。

会話の所々に雑音が入り言葉を掻き消していく。

「約束する。さっきの話しは誰にも言わない。――の事もこの世界の真実も。だからその代わり俺がこの手で――を手に入れたら、その時は――の事について話してくれ」
 
そう言っている俺の目の前にある一本の剣が浮いていた。

その剣は俺の言葉に少し間を置いてから前後に刀身を傾けさせる。

それを確認した俺はホッとして優しく笑った。
 
そして剣は白銀の髪を持った彼女の側へと行く。

「っ!」
 
そこでまた激しい頭痛が俺を襲った。

その頭痛は今までよりも一層激しい物で、ガンガンと鈍器で頭を何度も殴られているような感覚に陥らされた。

「くっ!」
 
しかし俺は彼女の手掛かりを掴むため、意識を集中させて記憶を途切れさせまいとする。

「えっ? それは言って良いの?」
 
彼女の声が届いた時、俺は伏せていた顔を上げる。

そして目の前の光景に目を丸くした。

剣と会話をしているであろう夢の中にも出てくる彼女の顔は、真っ黒なペンで塗りつぶされたように見えなくされていた。
 
その光景に一瞬の恐怖を感じた時、彼女の言葉が耳に届く。

「ブラッドの一番相性の良さそうな――の事なんだけど」

「俺の……一番相性の良いものって……何なんだよ! どうしてお前はいつも、大切なところで消えるんだ!!」
 
そう力強く叫んだ時、俺の中でまたとある感情が暴れ出そうとしていた。

しかし俺は必死にその感情を抑え込む。