「おい! ブラッド! そんなところでぼうっとしていないで、お前は黒焔の目を何とかしろ!」
 
するとサファイアの絶対零度の中に閉じ込められていた黒焔の目が、絶対零度に込められた精霊たちを食らって、分厚い氷を突き破って外へと出てきた。

「いや……何とかしろって言われても!」
 
俺はアムールに魔力を注ぎながら、分裂した二体の黒焔の目を相手に斬りかかる。

「さすがにこの化け物を二体相手にするのは骨が折れるっての!!」
 
そう叫びながら何とか黒焔の目と相手を取りつつ、アムールで切りかかって行く。

しかし黒焔の目は俺の剣撃を次々と避けて行く。
 
その姿を見た俺はさっきのクラウンの言葉を思い出した。

「もちろんさ。だってこの子たちは黒焔の太陽の目の役割を果たす子たちだ。その目で見た物の情報を瞬時に分析して、次の策の提案を黒焔の太陽へと送る」

「っ!」
 
てことはだ。

こいつらは見る事によって常に先の事を分析して、俺の動きを予測しながら動いている事になる。

そして俺が同じ動きを何度も見せれば、俺が次にどう動くのか見なくても分かるようになる。
 
だったらいっそのこと、あいつらの目を封じた方が話は早いんじゃないのか? 

そんな考えが頭の中を過ぎった俺は、軽い笑みを頭上に左手をかざし。

閃光(フラッシュ)!」
 
もう一度閃光の魔法を使って黒焔の目を怯ませる。

そしてその隙きに俺はアムールに送っていた魔力を解き、ただの普通の剣の状態で黒焔の目に向かって思い切り切っ先を突き出した。

「ぎゃいぃぃいいいぃ!!!」
 
俺が思い切り突き出したアムールの切っ先は、見事に黒焔の目に命中した。

「よしっ!!」

『ブラッド! お見事です!』
 
頭の中に流れるレーツェルの言葉に耳を傾けながら、俺は直ぐにもう一匹の黒焔の目に向かって行く。

「これで! 終わりだぁぁぁぁ!!」
 
そう叫びながら思い切りアムールの切っ先を突き出した時、俺の目の前に一人の青年が姿を現した。

「なっ?!」
 
その青年は腰から短剣を抜くと、俺が突き出した切っ先を呆気なく跳ね返した。

俺は直ぐに後ろに飛んで、黒焔の目の前に立っている青年を睨みつけた。

「お前は……アルバ!!」
 
青年――アルバは閉じていた目を開くと、オフィーリアと同じ碧眼の瞳を鋭く細めると俺の姿を捉えた。