「氷の精霊よ、花の精霊たちよ、その力を我に貸し与え、この場に無数の花を咲き誇らせよ! 氷の花(グラースフルール)!」
 
サファイは自分の左手に魔力を込めると、手のひらを地面へと押し当てる。す

ると自分の足元から冷気が地面全体に広がっていき、無数の氷の花を咲かせていった。
 
サファイアが咲かせた氷の花々は、キラキラと銀色の光を放って見える。

そしてサファイは自分の足元に咲いている花々の中の一輪を摘むと、再び詠唱を始める。

「一面に咲き誇りし氷の花たちよ、その美しい姿を一変させ、我の助けとなれ、氷の花びら(グラースブリューテンブラット)!」

「っ!」
 
地面に咲き誇っていた花たちは、サファイアの詠唱によって花びらを可憐に舞い上がらせた。

そして舞い上がった花びらたちは、サファイアの周りを一周してから勢い良くクラウンへと向かって行った。

「くっ!!」
 
花びらの竜巻の中に閉じ込められたクラウンは、何とか脱出しよと試みるが、激しく待っている花びらたちによってどんどん体に傷を負って行く。

「これが……サファイアの力なのか」
 
クラウンの周りを舞っている花びらたちは、そこらへんに生えていた花から使われたわけじゃない。

サファイアの魔力と氷結の力によって作られた、氷の花たちの花びらが使われているんだ。当然固くそして鋭い。

「魔法を放つタイミングと呼吸が一切乱れてなくて上手い連携だった。さすがの俺でも、あんなスムーズに魔法を連発することなんて出来ない」

『サファイアは私たち守護者の中でも、特に戦術についてのエキスパートだったんですよ。私たち守護者たち全員の力を把握して、そこから私たちが必ず勝てる戦略を考えてくれたりもして、だからこそサファイアは誰よりも自分の氷結の力を上手く引き出せるように、数多くの戦い方を考案したんです。先程の物もその中の一つですよ』

「なるほど。だからスムーズに魔法を連発する事が出来るのか。俺だったら次にどうするか数秒考えるけど、サファイアにとってそれは時間の無駄ってわけだ」
 
常に効率よく戦いを自分の優位に持っていけるように考えられた戦術方。

そして自分の氷結の力を使って考えられた魔法の繋ぎ方。

……これはサファイアから学ぶ物が多くありそうだな。