するとサファイアの詠唱に反応するように、サファイアが身につけているターコイズブルー色の宝石が青白い光を灯した。

「サファイアの耳飾りが共鳴している? まさか彼女の魔力に反応しているのか?」

『あれはサファイアの氷結の力を抑える制御石です。氷国でしか採れない貴重な鉱物らしくて、まだ幼かったサファイアがそれに触れた時、一瞬だけ氷結の力が収まった時があったそうなんです。だからサファイアはもしかしたらと思って、あの宝石を肌身離さず身につけるようにしたそうです』

『しかし逆にあの制御石が壊れるような事があれば、サファイアの氷結の魔力は一気に溢れ出る。もしそうなった時は、誰もあの力を抑え込む事は出来ない。実際サファイア自身もあの制御石を自分でぶっ壊して、自分の命と引き換えに七罪の悪魔の内の一人だった嫉妬の粒子を倒している』

「そうなのか……」
 
だからサファイアは俺に言ったのか、氷結の力を使えばその力に飲み込まれて死んでしまうかもしれないって。

それは実際にサファイアが体験したからこそ言える事なんだ。
 
きっとサファイアだって思いも寄らなかったはずだ。

みんなを守るために自分の力を抑えていた制御石を壊した事によって、まさか自分がその力に飲み込まれて命を落とす事になるだなんて。

そして氷結の力がどれだけ強大で恐ろしい物だったのかを、サファイは本当の意味で知らず知る事になった。

「精霊たちよ、生成した細氷で奴らの体を穿て! 細氷(ダイヤモンド)!!」
 
その言葉によって、サファイアの放った細氷がクラウンへと向かって行く。

しかしクラウンはサファイアが放った細氷にニヤリと笑みを浮かべると、クリエイトを構えてから詠唱を始める。

「黒の精霊よ、新月の精霊よ、幻影の精霊よ、その力を我が魔剣クリエイトに集め、目の前の者を新月の闇の中へと誘え。新月の剣(ルーナ・ノア・イスパーダ)!」
 
サファイアとクラウンお互いに放った魔法が激しくぶつかる中、サファイアは直ぐに次の魔法を放つための準備を進める。