クラウンの言葉に耳を傾けながら逃げていた時、俺の直ぐ横を黒い槍が掠めていった。

「くっ!」

『ブラッド!』
 
何とかギリギリ避ける事が出来た俺は、瞬間転移を使ってその場から別の場所へと飛んだ。しかし――

「――だから早く俺を殺さないと、逆に俺より先に殺されるよ?」
 
瞬間転移で別の場所へと飛んだ時、俺は既に黒い槍たちに包囲されていた。

「なに?!」
 
俺の姿を捉えた黒い槍は一斉に俺目掛けて飛んでくる。

「くそっ!」
 
瞬間転移を使ってもう一度飛ぼうにも間に合わない! そして無数の黒い槍が俺の体を貫こうとした瞬間。

絶対零度((ゼロアブソルート)
 
その一言によって、俺たちの周りに居た黒い槍は一瞬にして凍らされた。

「なに?」
 
そして黒い槍たちを凍らした氷は、二つに分裂した黒焔の目も氷の中に閉じ込めてしまった。

「まったく……本当に危なっかしいやつだな」
 
その声に主が姿を現した先へと、この場に居たみんなは視線を送る。

しかし俺はその姿を見て内心ホッとしながら苦笑した。

「悪いな、サファイア。助かったよ」
 
その一言にサファイアは眉を寄せた。

「そんなことより、お前はもう少し自分の感情をコントロールしろ。あいつに言われた事を引きずったままでは、黒焔の目を倒すことすら出来ないぞ!」

「っ!」
 
サファイアのその言葉に俺は目を見張った。

見事に図星を刺された事に内心驚きながら、俺はサファイアから視線を逸した。
 

そんな俺の姿を見下ろしながら、サファイアはその場から飛び降りて俺たちと同じ場所へと降り立った。

「まさか……お前はサファイアか?」
 
クラウンのその問いかけに、サファイアは青紫色の瞳を鋭く細ませると胸の前で腕を組んだ。

「ああ、そうだ」