「ぎゃいぃん!!」
 
俺に殴られた黒焔の目はそのままクラウンのところへと飛んで行く。

『き、効いた?!』

「ふっ……やっぱりな!」
 
自分のところに飛んで来た黒焔の目を、クラウンは左手でキャッチするとじっと黒焔の目を見下ろした。

『ブラッド? 一体どういう事なんですか?』

「な〜に、ちょっと考えてみたんだ。あいつが精霊の力を借りた魔法を食らうんだったら、精霊の力を一切借りてない物理攻撃だったら、もしかしたら効くんじゃないかって思ってさ」
 
あまり自身はなかったけど、どうやら大当たりみたいだったな。

『なるほど……。確かに物理攻撃ならば黒焔の目でも直ぐに対処出来ないと思います』

『だな。あいつは常に魔力を食らう事を前提に待ち構えている。そんな中、突然殴ってくるなんて思ってもいないだろうしな』
 
俺たちの話を聞いていたクラウンは、軽く目を細めると左手の中に居る黒焔の目を見下ろす。

「確かに君の言う通りだね。まさか殴ってくるだなんて俺も思っていなかったよ。でもこの手はもうこの子は通じない」

「なんだと?」

クラウンは右目に魔力を注ぐと、泡を吹いて気絶している黒焔の目に力を注いで行く。

すると気絶していた黒焔の目は意識を取り戻すと、カッと目を見開くとその姿を二回りくらい大きくさせた。

「なっ!」

『黒焔の目が大きくなっていくだと!?』

『おそらくクラウンが自分の魔力を黒焔の目に分けているんです!』
 
大きくなって新たに魔力を得た黒焔の目は、その姿を二つに分裂させると再び狙いを俺に定めて、黒い槍を飛ばしてくる。

「ちっ!」
 
俺は空中浮遊の魔法を使ってその場から離れる。

「無駄だよ、ブラッド君」

「はあ?!」

「その子たちはさっきまでじっと君の移動するところを見ていた。だから学ぶんだよ。次に君がどんな動きをするのかってね」

「学ぶだって? その化け物にも知能があるって言うのかよ?」

「もちろんさ。だってこの子たちは黒焔の太陽の目の役割を果たす子たちだ。その目で見た物の情報を瞬時に分析して、次の策の提案を黒焔の太陽へと送る。だから――」