「つまり……俺は最初から全部お前の手の上で踊らされていたっていうのかよ?」

「ああ、そうだよ。本当だったらその右目は、オフィーリアと出会った時に覚醒させるはずだったんだけど、どうやら君は俺が思っていた以上にその右目を使いこなしていたみたいだから、別の作戦を立ててからレギオを使って、俺はその右目を無理矢理覚醒させた。……いや、中に居る彼女を無理矢理叩き起こしたんだよ」
 
【中に居る彼女】と言う言葉に俺の心臓は大きく跳ねた。

そしてあの光景がフラッシュバックして嫌な汗が滲み出て頬を伝った。

✭ ✭ ✭

「……ガンマ。今の話……」
 
私はガンマの体に治癒魔法を施しながら、クラウン様とブラッドのやり取りを見ていた。

そしてクラウン様とブラッドがそれぞれ持っている右目の能力について知った。
 
クラウン様はあの日からずっと、右目を隠すように右顔だけに仮面を付け始めた。

てっきり私は右目の事を誰にも知られないように付けているものだとばかり思っていた。

でも今思えばクラウン様はきっと、右目に仮面を付ける事によってその力を抑えていたのかもしれない。
 
それには何か理由があるのかもしれないけど、クラウン様はいざという時にしか右目の力を使っていなかった。

だから私たちも右目の本当の能力について知らなかった。
 
いや、もしかしたらアルファなら何か知っていたのかもしれない。

私やガンマに比べたら、アルファは自分から進んでクラウン様の研究を手伝っていたし、あの右目の研究についても何かしら関わっていたのかもしれない。
 
しかしそれを知ろうにもアルファはもうこの世にはいない。

クラウン様が……殺してしまったから。

「あの右目については何も知らねぇなぁ。ただレギオから少しだけ話を聞いた事がある」

「レギオからだと? ……そう言えばあいつ、ブラッドの右目の事を紅い悲鳴と言っていたな。それが何か関係しているのか?」

「ああ、そうだぁ。なぜあの右目が紅い悲鳴と呼ばれているのか、レギオは懇切丁寧に俺に話してくれてよぉ」
 
ガンマはそう言って、ブラッドの右目をじっと見つめた。

「ベータよぉ。お前は疑問に思ったことねぇか?」

「疑問だと?」
 
一体何の事を言っている?

「よく考えてみろぉ。普通クラウン様があの紅い瞳を右目に宿したなら、もう一つ残っているのは左目の紅い瞳だろ?」

「っ!」
 
確かに言われてみればそうだ。

もしあれが対になる両目同士となるのなら、ブラッドの紅い瞳は左目に宿るはずだ。
 
しかし二人は紅い瞳を右目に宿している。

そうなるとあの右目は対になる両目ではないという事になる。